ストロベリーキャンドル



「も、もしもし……」


電話の向こうではさっきの音が聞こえる。
救急車の音や消防のサイレンの音が聞こえていた。


〈一ノ瀬くんか?神崎くんと同じ営業部の武田だ。
 落ち着いて聞いてくれ〉


営業部の武田部長の声だった。
ごくりと喉を鳴らして武田部長の声を聞く。
その言葉を聞いた時、思わず携帯を落としてしまいそうだった。










仁が、事故に―?












〈すぐにこっちまで来れるか?
 たった今、緊急搬送されたばかりなんだ〉


「あ、は、はい。行きます。
 最終便ですぐに向かいます!」


〈着いたら電話してくれ。場所を教えるから〉


「はいっ」


電話を切って、適当な服に着替える。
必要最低限のものを持ってマンションを出て、
近くのタクシーに飛び乗った。










空港に着くと券を発行してもらう。
幸い席は空いていた。


搭乗時刻までギリギリのところで飛び乗って、
飛行機は出発した。


飛行機は新婚旅行で初めて乗ったからいくらか慣れていた。
窓の外を睨みつけて、きゅっと手を握る。


どうか無事でありますように。


まさか死ぬなんてことないよね?
目を閉じるとさっきの大きな音が蘇ってきて震える。
食べたものを全て吐き出しそうな気持ち悪さが襲ってきた。



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