ストロベリーキャンドル



仁は通勤途中、
建設中の建物から鉄筋が落ちてきて頭を強打したらしい。


意識はなく、出血がひどいのだそう。


電話のために離れて歩いていた武田部長は幸いにも怪我はなかった。


大きな事故だったらしく、現場は騒然としていたけれど、
被害者は仁だけだったそうだ。


どうしてそんな何万分の一かの確率で仁が事故に遭わなくてはいけないのだろう。
明日には、帰ってくるはずだったのに。







当然眠れるわけもなく、飛行機は無事に到着した。


武田部長に電話をすると、細かく場所を教えてくれた。


その病院までタクシーに乗って移動する。
すぐに病院にたどり着いて、
私は手術室の前にいた武田部長を発見した。


「部長!」


「一ノ瀬くん。無事に着いてよかった。大丈夫か?」


「は、はい。私は大丈夫です。あの、仁は……っ」


「今、手術中だ。頭部の損傷が酷かったみたいで、
 手術は難航しているらしい」


「そうですか……部長にお怪我がなくて、
 ひとまず良かったです……」


私が言うと、部長は私の肩に手を置いた。


「私のことはいいから、神崎くんの身を案じてやりなさい」


「ありがとうございます……」













何時間こうしていたんだろう。
さすがに眠くなってきた頃、
手術中のランプが消えて、中からドクターが出てきた。


「仁、仁は……っ!」




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