【最新版】異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「今の、忘れて──」


 忘れてください。そう言いかけたとき、がしっと肩を掴まれる。


「そ、それは異世界トリップ!?」

「……うん?」


 これは予想外の反応だ。これまで目も合わなかったエドガーさんが食い気味に問いかけてくる。思わず身体を仰け反らせると、さらに顔を近づけてきた。


「どんなカラクリを使ったの? あ、いや、きみはさっきレシピ本が光ったって言ったよね。それが時空移動の道具?」


 目をキラキラとさせて、私の答えを今か今かと待っているエドガーさんに困惑する。


「え、私の話、信じてくれるの?」

「当たり前だろ! 発明家なら、時空旅行ができる発明を一度はしたいって夢見るはずだ!」


 さっきまでずっとどもっていたのが嘘みたいに、鼻息荒く饒舌に語るエドガーさんはやけにテンションが高く人が変わったよう。

 私が圧倒されている間も、彼の発明熱は止まらない。


「今はまだ時空移動、タイムトラベルの発明はされてないけど、俺がいつか作ってみせ──」


 突然、言葉を切ったエドガーさんは我に返ったようだ。はあっと深いため息を吐いて、地面に視線を落とす。


「また、ガラクタ作りって言われるな、これじゃあ。実際、失敗ばかりだし」

「誰かにそう言われたの?」


 そう聞いてみたものの、返ってきたのは沈黙だった。


「かの有名なトーマス・エジソンは『天才は1%の閃きと99%の努力』って名言を残してるの、知ってる?」

「トーマス……誰?」

「たくさん失敗して、たくさんガラクタを生み出して、それを乗り越えた先に夢とか奇跡とか、希望などなどがあるわけですよ」


 いつかの授業で耳にした偉人の名言を、私はさも得意げに語る。

 でも、エドガーさんは珍しくこちらを見つめて、熱心に聞いてくれている。


「というか、タイムトラベルの発明してください。時空移動ができたら、私も元の世界に帰れるかもしれないですし!」

「本気で言ってる? 俺をバカにしてるなら、もうやめ……」

「してない! むしろ、こっちも必死なんですよ。いきなりわけのわからない異世界に来ちゃって、向こうでの生活とかもあるわけで。それに、エドガーさんが時空移動ができる発明をしてくれれば、いろんな世界を旅できるかもしれない! それって、ものすっごく楽しそう!」


 ぺらぺらと喋っていたら、エドガーさんが口を半開きにしたまま動かないのに気付いた。


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