【最新版】異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「これを油で焼きますから、皆さん火傷しないように離れていてくださいね」


 この油はオリヴィエが花やその種子、豆や果肉をブレンドして作った『オリヴィエスペシャル』。ネーミングセンスのなさはさておき、植物油なので低温でも固まらないからじっくり揚げられる。ちゃんとお肉に火を通したいときには、おススメだ。

 私はあらかじめ火をかけていた油の入ったフライパンに、豚ロースを入れて揚げる。

 焚き火で料理するなんて、ひさしぶりかも。

 お母さんがインドア派のお父さんを無理やり外へ連れ出して、よくキャンプへ行ったものだ。休みの日に家にこもっていることは、ほとんどなかった。

 森や川辺、沼を一望できる高台。キャンピングカーで、とにかくいろんなところへ行った。私にとってはちょっとした旅だ。知らない景色に出会うたび、わくわくしたのを覚えている。


「やっぱり、コンロじゃないから火加減が難しいな」


 私は重いフライパンを持って火に近づけたり、遠ざけたりして温度を調節した。

 ときどき風にあおられて大きくなる火が、私の頬を火照らしていく。

 こういうとき、お母さんが代わりにフライパンを持ってくれたな。それでなぜか、お父さんがうちわで仰いでくれた。役割が逆な気がするが、どちらかというとお母さんのほうが男らしかったのだ。

 とにかく、私はひとり娘だったので、ふたりにすごく甘やかされてたと思う。

 懐かしい記憶に自然と口元が緩んだとき、フライパンの持ち手を横からやんわりと掴まれた。
 顔を上げると、正反対の方向を向いたエドガーがフライパンを取り上げる。


「お、俺がやる……」

「え、ありがとう! 重いなーって思ってたところだったから、助かるよ。じゃあ、表面がきつね色になるまで、両面ひっくり返しながら揚げてくれる?」

「りょ、了解」


 世紀の大発明をするかのごとく、エドガーは琥珀色の油の中で踊るカツを凝視している。

 そうこうしていると、私のスカートを誰かが引っ張った。

 振り向けば、いつの間に隣にいたのか、木箱の上に乗ったロキが私を見上げている。


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