【最新版】異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「まずは一丁出来上がり! 勝負に勝つ、トマトカツ丼弁当ですよ」


 お弁当を前に出すと、「弁当ってなんだ?」「なんだかよくわからない食べ物だけど、いい匂いがするな!」という声があちこちから聞こえてくる。


「お弁当は携帯食みたいなものです。でも、圧倒的に違うのは彩りです! 食欲がわきませんか?」

「たしかに、肉がうまそうだ」


 ごくりと喉を鳴らした騎士たちがトマトカツ丼弁当に釘付けになって、首振り人形のように頷く。

 それに満足した私は、エドガーとせっせと大量のトマトカツ丼弁当を作った。

 するとそこへ周辺の偵察に行っていたバルドさんと、幌馬車から荷物を下ろしていたオリヴィエがやって来た。


「お帰りなさい、バルドさん、オリヴィエ。それからエドガーも、お疲れさま。はい、これ。皆の分のお弁当」


 お弁当を差し出せば、三人は見慣れないからか怪訝そうに受け取った。


 エドガーたちがその場に腰を下ろすのを見つつ、私はロキにもウサギが食べても大丈夫そうな野菜の盛り合わせ弁当を渡す。


「私の分もあるのね。ありがとう、雪」

「ご飯は皆で食べないと、おいしくないからね」


 ロキと顔を見合わせて、笑みを交わす。その光景を見たオリヴィエがフォークを落とした。


「ウ、ウサギが人の言葉を話してませんか!?」

「あ、オリヴィエにロキのこと紹介してなかったね」


 彼らの驚きようからするに、異世界のウサギは全員喋るわけではないらしい。私はロキを手で指す。


「こちら、森で出会ってから一緒に行動してるウサギのロキさんです」

「見ればわかるから! なんでそんな平然と喋るウサギを受け入れてるんですか!」

「まあまあ、冷めちゃうのでお弁当を食べちゃいましょう! いただきます!」


 絶句しているオリヴィエの横で、私はお弁当を顔の前に近づける。

 まずは匂いを嗅いだ。醤油――正確にはプランブランのどこか日本を思わせる香りに、異世界にいても故郷がそばにあるようで胸が温かくなる。

 私は完熟のトマトをたっぷり載せて、フォークでこんがりと焼けたカツを口元まで運ぶと厚めの衣の表面を噛む。

 その瞬間、サクッと音を立てて肉汁があふれる。

 少し濃いめの汁は炊き立ての白米と合わさってマイルドになっており、カツによく合った。


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