【最新版】異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「な──なにしてるの!」


 その背にしがみつき、自殺を阻止するけれど、エドガーはじたばたと暴れだした。


「帰る、無理だ、王都なんて人がうじゃうじゃいるのに……! 俺がなんのために、パンターニュの森に住んでると……っ」

「森に引きこもってばっかりいたら、人見知り治らないよ!」

「治らなくたっていい! 俺は孤独に生きる!」

「そこ、格好つけるところじゃないからね」


 私がエドガーと格闘している間、傍観していたオリヴィエが訝しげに眉を寄せる。


「城に行きたくないなら、家に帰らせればいいじゃないですか」

「そんな薄情なこと言わないで、オリヴィエも手伝ってよ!」

「嫌ですよ。必死になって引き留める必要性が感じられません」


 容赦ない毒を吐くオリヴィエの頭を、ロキは小さく飛び跳ねて軽く叩く。


「痛っ、なにするんですか!」

「まったく、かわいくない子だね」


 腰に手を当てて叱っているロキにやっぱりお母さんみたいだと思いながら、私はなんとかエドガーを馬車の中央へ引きずり入れた。

 世話が焼ける人だな。

 私は馬車の出口を死守しつつ、そこから見える景色に視線を移す。


「わあ……」


 時計塔に教会、立ち並ぶ豪華な家々。王都はすべてが白亜と金装飾にあふれていた。

 エーデの町に比べて石畳の道は舗装されているせいか、馬車で走ってもガタガタ揺れない。

 生まれてこの方、見たことのない世界に心躍らせていると、ぐったりした様子でエドガーが隣に座った。


「飛び降りたらダメだよ」

「もうしない、諦めた。あとはただひたすら、心を無にする……」


 まるで、死刑宣告を受けた囚人のようだ。気の毒だが、国王の召喚なら簡単に断れないはず。罰せられるよりはマシだろう。


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