【最新版】異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「私は雪といるわ。だから私も一緒に行く」

「本当に!? ロキがいてくれるなんて心強いよ!」


 ロキの首にひしっと抱きつき、そのまま片手で抱き上げる。そして、空いたほうの手をエドガーの腕に絡ませた。無論、逃走を阻止するためだ。


「なぜ、わざわざ、腕……を?」


 エドガーは錆びたネジを回すように、ギギギッとぎこちない動きでこちらを振り返る。その震えようといったら、寒空の下で追い剝ぎに遭ったかのようだ。


「きみは包囲されている」

「い、意味がわからない……」


 魂が抜けて抜け殻のようになったエドガーの腕を無理やり引っ張って歩き出すと、自然と視線が上を向いた。街灯が少ないせいか、私のいた世界よりも星の瞬きが鮮明に見えて月が近く感じる。ときどき吹く夜風が冷たくないのはきっと、エドガーが私に帰る場所を作ってくれたからだろうと思った。




 エドガーの家は国境線近くのパンターニュの森の中にあった。


「ちょっと散らかってるけど、さ、避けて入って」


 レンガ造りの家で外観は大きい。中はさぞ広いはず……なのだが、私は入り口から前に進めない。理由は足の置き場がないからだ。


「ちょっと避けるどころの話じゃないんだけど」


 ざっと見たところ、床には脱ぎ捨てた衣服にスパナのような工具の数々と用途不明な機械、腐って異臭を放つリンゴ(以下、省略)が転がっている。


「これはゴミ屋敷だね」


 絶句している私の隣で、ロキがぼそっと呟いた。

 お世話になるのに失礼だとは思うが、ロキの感想は的を射ている。

 一方、エドガーはというと、片足を上げながら頭を下げて障害物を避けるというすご技を見せつつ、どんどん中へ進んでいた。

 そんなアクロバットをしなくても済むように、片付ければいいのに。


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