【最新版】異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「あ、おにぎらず……」
握らないおにぎり、おにぎらずはお母さんがランチワゴンでお弁当屋を開いていたときの人気メニューだった。
学校が休みの日、お母さんの仕事を手伝ってランチワゴンに乗ると、決まって私にも作ってくれたのを思い出す。いわゆる、まかないというやつだ。
毎回、中に入れる具材の組み合わせをいろいろ試すのだが、なにを血迷ったのか、お母さんがデザートおにぎらずを作りたいと言い出したことがあった。そのとき生まれたバナナと生クリームのおにぎらずは、この世のものとは思えない味がした。
「もう二度と、作られることはなかった幻のおにぎらずだけどね。あ、でもキムチとマヨネーズのおにぎらずは意外においしかったなー」
レシピに書かれたお母さんの文字を指先でなぞりながら、私はあのときの楽しい気持ちが蘇ってくるのを感じつつ材料を確認する。
するとそこには【プランブランの代わりに醤油を使う】と書いてあった。
「お母さんのレシピ本に、どうして異世界の調味料の名前が?」
他にも異世界の調味料や食材を日本のものと比べるような説明書きがたくさんあり、困惑していると背後から声がかかる。
「雪、どうしたの?」
振り返るとロキがいた。
「お、起こしに行こうと思ってたんだよ。おはよう」
隠す必要などどこにもないのだが、なぜか慌ててレシピ本を閉じてしまった。
きっと、まだ少し頭が混乱しているのだ。
私は次々とわいてくる疑問をすべて頭の外に追い出し、煙突付きの炉の前に立つ。
そこに積まれた薪に火をつけて、上から吊るされた鋳鉄の窯でお米を炊いた。
「朝食を作ってたんだね」
近づいてきたロキの足元に、私は踏み台になりそうな木箱を用意してあげた。
その上にぴょんっと飛び乗ったロキを見届け、私は玉ねぎを薄切りにしながら答える。
「おにぎらずを作ろうと思って」
フライパンで豚ロースと玉ねぎを焼き、砂糖とお酒を小さじ一杯、生姜のすりおろしと醤油の代わりにプランブランを大さじ二杯混ぜたものを投入する。
「プランブランの香ばしい匂いがするわね。ご飯が進みそう」
「ご飯が進むって……ロキはウサギでしょう? というか、ずっと聞きたかったんだけど、ロキはどうして人の言葉が話せるの?」
この世界の人も喋れるウサギに驚いていたので、ロキは特殊なのだと思う。
手を動かしながら隣を見れば、ロキは耳を垂らして目を伏せる。
「そうよね、おかしいわよね……。私はきっと、ここにはいちゃいけないのよ」
耳をぺたんと下げるロキに、私は手を止めた。
「どうして、そんなふうに思うの? 私はロキと喋れて嬉しいのに」
その問いかけには答えず、ロキは曖昧に微笑んだ。
急にどうしちゃったんだろう。
不思議に思い、さらに言葉を重ねようとしたとき──。
握らないおにぎり、おにぎらずはお母さんがランチワゴンでお弁当屋を開いていたときの人気メニューだった。
学校が休みの日、お母さんの仕事を手伝ってランチワゴンに乗ると、決まって私にも作ってくれたのを思い出す。いわゆる、まかないというやつだ。
毎回、中に入れる具材の組み合わせをいろいろ試すのだが、なにを血迷ったのか、お母さんがデザートおにぎらずを作りたいと言い出したことがあった。そのとき生まれたバナナと生クリームのおにぎらずは、この世のものとは思えない味がした。
「もう二度と、作られることはなかった幻のおにぎらずだけどね。あ、でもキムチとマヨネーズのおにぎらずは意外においしかったなー」
レシピに書かれたお母さんの文字を指先でなぞりながら、私はあのときの楽しい気持ちが蘇ってくるのを感じつつ材料を確認する。
するとそこには【プランブランの代わりに醤油を使う】と書いてあった。
「お母さんのレシピ本に、どうして異世界の調味料の名前が?」
他にも異世界の調味料や食材を日本のものと比べるような説明書きがたくさんあり、困惑していると背後から声がかかる。
「雪、どうしたの?」
振り返るとロキがいた。
「お、起こしに行こうと思ってたんだよ。おはよう」
隠す必要などどこにもないのだが、なぜか慌ててレシピ本を閉じてしまった。
きっと、まだ少し頭が混乱しているのだ。
私は次々とわいてくる疑問をすべて頭の外に追い出し、煙突付きの炉の前に立つ。
そこに積まれた薪に火をつけて、上から吊るされた鋳鉄の窯でお米を炊いた。
「朝食を作ってたんだね」
近づいてきたロキの足元に、私は踏み台になりそうな木箱を用意してあげた。
その上にぴょんっと飛び乗ったロキを見届け、私は玉ねぎを薄切りにしながら答える。
「おにぎらずを作ろうと思って」
フライパンで豚ロースと玉ねぎを焼き、砂糖とお酒を小さじ一杯、生姜のすりおろしと醤油の代わりにプランブランを大さじ二杯混ぜたものを投入する。
「プランブランの香ばしい匂いがするわね。ご飯が進みそう」
「ご飯が進むって……ロキはウサギでしょう? というか、ずっと聞きたかったんだけど、ロキはどうして人の言葉が話せるの?」
この世界の人も喋れるウサギに驚いていたので、ロキは特殊なのだと思う。
手を動かしながら隣を見れば、ロキは耳を垂らして目を伏せる。
「そうよね、おかしいわよね……。私はきっと、ここにはいちゃいけないのよ」
耳をぺたんと下げるロキに、私は手を止めた。
「どうして、そんなふうに思うの? 私はロキと喋れて嬉しいのに」
その問いかけには答えず、ロキは曖昧に微笑んだ。
急にどうしちゃったんだろう。
不思議に思い、さらに言葉を重ねようとしたとき──。