【最新版】異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「……んぐ、ライスの中になにか入ってる? 甘い気がする」

「トウモロコシご飯だよ。具がないところも、味がするように工夫したの。塩コショウが効いてておいしくない?」

「うん、それにご飯とレタスを一緒に食べたのは初めてだ。肉の甘じょっぱさでご飯が進むし、レタスが入ってるから後味はさっぱりする……はむっ」


 そんなに手の込んだ料理ではないのだけれど、よっぽど感動したのか、エドガーはすらすらと食レポをする。


「生姜焼き入りのおにぎらずっていうんだよ」

「おにぎらず……初めて聞いたな」


 パクパクとものすごい勢いでおにぎらずを口に運ぶエドガー。そろそろ詰まらせないかが心配になる。

 私がお茶を差し出そうとしたとき、案の定エドガーはごふっと咳き込んだ。


「エドガー!? ほら、これ飲んで!」


 その背を叩きながら、私はお茶が入ったカップを差し出す。

 それを慌てて受け取ったエドガーは、カップに口をつけて勢いよく傾けた。


「え、それ熱いよ!?」


 私の忠告も空しく、ゴクゴクと喉を鳴らしながら飲むエドガーは「あっつ!」と叫びながら勢いよくお茶を吹き出した。


「ごほっ、げほっ……死ぬ、口の中が溶ける……っ」

「エドガー、落ち着いて!」


 ご飯を食べるのも忘れる、身なりを整えるのも怠る、家と作業場を見回せば物が積み木のように重なっていて整理整頓ができないのは一目瞭然。あと、コミュ障。発明のこと以外には無頓着な彼の生活能力のなさは目に余るほどだ。


「はあっ、はあ……一瞬、天国が見えた」


 猫背のまま、幸の薄そうな顔で空になったカップの底を見つめるエドガー。危なっかしい人だな。発明家って変人が多いっていうけど、異世界でもそうなのかもしれない。

 命の危機と直面したらしいエドガーは顔に疲弊の色を滲ませ、食事を再開する。だが、今度は前髪がおにぎらずにつきそうになっていて気になる。

 あれ、やっぱり長すぎるよね。

 切り落としたい衝動にうずうずしながらおにぎらずを完食した私は、食事を終えるのと同時にエドガーの手を掴んだ。


「エドガー、ちょっとこっちに来て」


 強引に手を引き、部屋の出口へと歩いていく。作業場から出るとき、台の上にあったハサミも拝借した。


「えっ、どこに行くの?」

「洗面所!」


 戸惑っている彼を洗面所に連行すると鏡の前に座らせる。先ほど入手したハサミをシャキンッと構えれば、エドガーの顔から血の気が失せる。


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