【最新版】異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「な、なにをするつもり?」
「ハサミ持って洗面所に来たんだから、やることはひとつでしょ」
「──殺る!?」
エドガーはブルブルと震えながら、椅子の背もたれに縋りつく。なにか、大きな勘違いをしているようだが、この際どうでもいい。私の任務は放置されて伸び放題になった雑草のごとき髪を除草ならぬ除毛すること。
「人のは切ったことないけど、まあ、なるようになるか」
「──人間を切る!?」
いちいち騒ぐエドガーに構わず、私は鬱陶しいほど乱雑に生えている髪にハサミを入れた。まずは長い上に、長年櫛で梳いていなかったせいで絡まった後頭部の髪からだ。エドガーは唖然としながら、鏡越しにハラハラと散る銀の髪を見つめている。相当ショックだったのか、微動だにしない。
エドガーはしばらくおとなしく髪を切られていたが、眼鏡にかかるほど長い前髪に取りかかろうとしたときだった。
「待って、そこだけはダメだ!」
我に返ったのか、エドガーは暴れだす。私は抵抗するエドガーから眼鏡を奪い取って、狙いを定めた。
「問答無用!」
前髪をばっさりと切り落とすと、綺麗な碧眼がよく見えるようになった。
前髪がよほど大事だったのか、失った事実に打ちひしがれている彼に、私は洗面台に置いてあったカミソリらしき道具を握らせる。
「その髭を剃ったら、少しは外に出たくなるかもよ」
「いや、髭がなくなったら俺の顔が前面にでちゃうから、できな──」
「エドガーは素性を隠さなきゃいけないようなこと、してないでしょ?」
「いや、その……してないとは言えないというか……」
もごもごと言い淀んでいる彼に、私はずいっと顔を近づけて凄む。
「髭はボーボー、髪もモサモサ、見るからに怪しいし。それだと初対面から印象が悪くなっちゃうよ。エドガー、いい人なのにもったいない」
現に私は、彼と初めて会ったときに不審者かと勘違いした。
第一印象は大事なので、そう言い聞かせると彼は渋々髭を剃りだす。
その間に、私は彼の衣服を取りにいくことにした。目を離した隙に逃げられそうで不安だけれど、いったん洗面所を離れる。
「失礼しまーす」
勝手に入るのは気が咎めるが、彼の部屋のタンスを開けて比較的綺麗そうな服を手に取ると急いでエドガーのもとへ戻った。
「エドガー、ただい……ま」
鏡越しに目が合った美男を見て絶句した。
肌艶から二十代半ばだろうとは思っていたのだが、髭と長い前髪のせいで年老いて見えていた彼が今や別人。きりっとした眉にすっと通った鼻筋、引き締まった口元にシャープな輪郭。あきらかになった彼の顔貌は高貴ささえ感じさせる。
「こ、こっちのほうがいいよ! エドガー、こんなにかっこよかったんだ!」
「俺は……落ち着かない」
弱りきった表情で、エドガーは眼鏡をかける。眼鏡もないほうが、イケメンぶりが前面に出るのではないか。そう思い立った私は、エドガーの前に回り込む。
「ハサミ持って洗面所に来たんだから、やることはひとつでしょ」
「──殺る!?」
エドガーはブルブルと震えながら、椅子の背もたれに縋りつく。なにか、大きな勘違いをしているようだが、この際どうでもいい。私の任務は放置されて伸び放題になった雑草のごとき髪を除草ならぬ除毛すること。
「人のは切ったことないけど、まあ、なるようになるか」
「──人間を切る!?」
いちいち騒ぐエドガーに構わず、私は鬱陶しいほど乱雑に生えている髪にハサミを入れた。まずは長い上に、長年櫛で梳いていなかったせいで絡まった後頭部の髪からだ。エドガーは唖然としながら、鏡越しにハラハラと散る銀の髪を見つめている。相当ショックだったのか、微動だにしない。
エドガーはしばらくおとなしく髪を切られていたが、眼鏡にかかるほど長い前髪に取りかかろうとしたときだった。
「待って、そこだけはダメだ!」
我に返ったのか、エドガーは暴れだす。私は抵抗するエドガーから眼鏡を奪い取って、狙いを定めた。
「問答無用!」
前髪をばっさりと切り落とすと、綺麗な碧眼がよく見えるようになった。
前髪がよほど大事だったのか、失った事実に打ちひしがれている彼に、私は洗面台に置いてあったカミソリらしき道具を握らせる。
「その髭を剃ったら、少しは外に出たくなるかもよ」
「いや、髭がなくなったら俺の顔が前面にでちゃうから、できな──」
「エドガーは素性を隠さなきゃいけないようなこと、してないでしょ?」
「いや、その……してないとは言えないというか……」
もごもごと言い淀んでいる彼に、私はずいっと顔を近づけて凄む。
「髭はボーボー、髪もモサモサ、見るからに怪しいし。それだと初対面から印象が悪くなっちゃうよ。エドガー、いい人なのにもったいない」
現に私は、彼と初めて会ったときに不審者かと勘違いした。
第一印象は大事なので、そう言い聞かせると彼は渋々髭を剃りだす。
その間に、私は彼の衣服を取りにいくことにした。目を離した隙に逃げられそうで不安だけれど、いったん洗面所を離れる。
「失礼しまーす」
勝手に入るのは気が咎めるが、彼の部屋のタンスを開けて比較的綺麗そうな服を手に取ると急いでエドガーのもとへ戻った。
「エドガー、ただい……ま」
鏡越しに目が合った美男を見て絶句した。
肌艶から二十代半ばだろうとは思っていたのだが、髭と長い前髪のせいで年老いて見えていた彼が今や別人。きりっとした眉にすっと通った鼻筋、引き締まった口元にシャープな輪郭。あきらかになった彼の顔貌は高貴ささえ感じさせる。
「こ、こっちのほうがいいよ! エドガー、こんなにかっこよかったんだ!」
「俺は……落ち着かない」
弱りきった表情で、エドガーは眼鏡をかける。眼鏡もないほうが、イケメンぶりが前面に出るのではないか。そう思い立った私は、エドガーの前に回り込む。