【最新版】異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「団長~っ、よくぞご無事で!」


 涙を流しながら再会を喜んでいる彼らを遠目に眺める。それだけで、バルドさんがどれだけ慕われているのかがわかった。

 宥めるように号泣する仲間の背を叩き終えると、バルドさんがこちらを見る。


「これから食事をとるんだが、お前たちもどうだ」


 なんて魅力的な提案。お腹も正直にぐうっと鳴る。そういえば、お母さんのお葬式のあと、夕飯を食べていなかった。

 思い出した途端に空腹感に襲われて、私は恥ずかしくなりながらも頷く。


「お言葉に甘えてもいいですか」

「ああ、こっちだ」


 バルドさんのあとを追って、駐屯地の端にある炊き出し場に行く。そこには干し肉や見るからに乾燥しているカチカチのパンが山のように積まれていた。

 えっ、これが食事?

 肉とか魚とか、もっとスタミナのつくものを食べているのかと思ったのだが、あまりにも質素すぎる。

 これで戦えるのだろうか。信じられない思いで騎士の顔を見回せば、頬がこけているようにも見える。顔にも疲弊の色が滲み、活力がまるで感じられなかった。


「バルドさん、他に食材はありますか?」

「いや、戦の最中は干し肉とパンだけだ」

「もったいない」


 バルドさんが「ん?」と片眉を持ち上げる。


「人間いつまで生きられるかわからないのに、食べたいものも満足に食べられないなんて人生損してます! あくせく働いたあとだからこそ、おいしいものを食べると幸せエネルギーを補充できるのに!」

「そうは言ってもな、戦は何日もかかる。保存がきくものでなければ、持ってはいけない。この付近で食べ物を調達しようにも、今は総力戦の最中だ。人員が割けない」

「でも、皆は絶対に負けられない戦いに挑んでるんでしょう? だったら身体は資本です。しっかり食べて力を蓄えなくちゃ。こんな食事じゃ全然元気になれないよ!」


 というか、あんな石みたいな肉とパンを食べるなんて、私が耐えられない。歯が折れそう、テンションが下がる。疲れ切った兵たちのこともあるので引き下がれなかった私は、挙手をする。


「人手が足りないなら、私たちが食材を調達してきます。ね、エドガーさん?」


 当の本人を見ると、腰を低くしてこっそり退散しようとしていた。私は彼に近づいて、逃げられないように腕を組む。

 エドガーさん、捕獲完了。


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