夢の中の世界
「なに?」


恵里果は気が付かないようで、首をかしげている。


「気が付かない? 車も自転車も人も、誰も通ってないんだよ?」


そう言う自分の声が微かに震えた。


背中に冷たい汗が流れて行くのを感じ、唾を飲み込んだ。


いつもなら、この窓から街の喧騒が聞こえ、肉眼でも人々や車が行きかうのが見える。


それが今日は一切見えないのだ。


「本当だ……」


恵里果が大きく目を見開いて呟く。


学校の近くに立っている企業のビルからも、社員が出て来る気配がない。


昼時に、外のコンビニや飲食店に行く人が1人もいないなんて、今まで1度もなかったのに。


「ねぇみんな! やっぱりなんだかおかしいよ!」
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