夢の中の世界
「……全員どこかに消えちゃったとかじゃないですよね?」


由祐の言葉に誰も返事ができなかった。


昨日まで普通に暮らしていた自分たちの世界がどう変化してしまったのか、まるで見当もつかなかった。


「世界が終る前の、ノアの箱舟じゃないよね……?」


恵里果の言葉にあたしは左右に首を振った。


「まさか。この教室が箱舟ってこと?」


「だとしたら、俺たちは生き残ったってことですよね?」


一輝が言うが、あたしは返事をしなかった。


あたしたちだけが生き残ってすでに他の世界の住人はいなくなっただなんて、そんな荒唐無稽な話は信じられない。


家族や友人たちがすでに死んでしまったなんて、信じたくもなかった。
< 19 / 145 >

この作品をシェア

pagetop