初恋エモ
でも、今なら言える。
集客はノルマ以上にできているし、自主制作のCDも完売。
ベースのメンテナンス代やスタジオ代もろもろ、バンドにかかるお金はバンドで稼げている。
大きなライブハウスに呼ばれたり、コンテストの最終選考に残ったり、バンドの将来も少しずつ見えてきた。
何しろ、真緒がサッカーを続けているように、私にだってやりたいことがある。
私はクノさんの、そして透明ガールの音楽をもっとたくさんの人に届けたい。
だから、いくら反対されようと、私はバンドを続けたいと。
「……ん?」
焼かれるハンバーグの音が響く中、かすかに音楽が聞こえた。
振り返ると、テレビでは音楽番組がやっていて、有名バンドが新曲を演奏していた。
スマホをいじっている母の隣で、真緒は真剣にテレビを眺めている。
私は慌ててリモコンを取り上げ、チャンネルを変えた。
「わ、私こっち見たいなぁ。ほら、あの芸人さん出てるよ!」
真緒は不満げな顔になったものの、画面に映し出されたお笑い芸人さんを見て笑い出した。ふぅ。
この調子じゃ、本当に近いうちに絶対母にバレる。
戦う覚悟を決めないと。