年上ダーリン、猫系につき溺愛中
(……昨日のアレ、気にしてんだろうなー)
マって何?とだけ聞けばよかったかもしれない。
わざわざどうしてそういう経緯になったのか言わなくてもよかった。別に浮気してるわけじゃないんだし。
『先生結婚してるってマ?』
『……? してるけど?』
『えーなんだあ。アタシ結構先生の事……』
(あ、これ聞かないほうがいいやつ)
『見てくれよー、俺の奥さん。アボカド食べてんの』
『……えっ、あ、ああ、うん、カワイイー…』
『寝顔も撮ってあるけどさすがに見せらんねえなあ』
『コラーー! 生徒の前でスマホの使用は禁止!』
『あっすんませーん』
アタシ結構先生の事、好き、――とか。
ぶっちゃけ、アホらしい。
俺の何を知ってんの?って思っちゃうというか。
俺は27でおまえは15。その時点で俺と君の間には壁があって、それを越えられる何かを君は持っているのかって思う。所詮大人に憧れただけの浮ついた気持ちのくせにって感じというか、語尾に(笑)をつけられるくらい笑える。
結局、塾であろうと学校であろうと教師と生徒という事にはなんら変わりはないのに。これがバレれば告白ってだけでも俺が干されるのに。
わかってんの? そこんところ。
結局、万が一告白の場面を誰かに見られて第三者の大人に密告でもされたら……絶対、俺が悪者。
手を出してないのに中学生に手を出す教師として俺の社会的地位は終わる。俺は1個も気持ち寄せてないのにそんなくだらない戯言で、俺の人生が終わるのは本当に無理だし。
(……湊は特別だったんだよなあ、)
我慢できなかったというより、理性が勝てなかった。
中学に通わなくなる湊。
どうせ俺の事なんかすぐに忘れるし。
――そんなの、俺が、無理じゃん。
「みー」
「……え、何」
俺が湊をみーって呼ぶのが珍しいからなのか、すでに化粧を始めていた湊がびっくりした様子で俺を見る。
やめろ、ビューラーしたまま俺を見るな、怖い。
「………可愛いね」
「え? あ、新しいチーク? 気づいたん?」
「じゃなくて。湊が」
「……? 意味わからん、何?」