蛍火に揺れる

「お義母さんが『今のうちに下見しておくのがいいんじゃない?』って言ってたけど、どうする?お店行ってみる?」

「そうだねー……そろそろ手持ちの服もキツくなってきたから、マタニティウェアも見たいかも」

「それじゃ行ってみよっか。ここからだったら電車になるけど……大丈夫?」

「だって三駅?四駅?でしょ?大丈夫だって!」

一番近いベビー用品のお店までは、電車で十分ほどかかる。
少し心配しているノリ君だったが、あっけからんと答えた私を見て若干ホッとしているよう。

実を言うと、退職して以来電車に乗ったことはない。
退職前の悪阻がひどい時期は、電車の揺れが気持ち悪くて気持ち悪くて…実は何度か途中下車を繰り返して乗っていた。
まぁ今回は休日だしラッシュみたいなすし詰めではないはずだし、恐らく座れるだろうから問題はないだろう。


「でもノリ君、明日って…出勤だよね?大村君と」

「あ………忘れてた」

思わず私はブッと吹き出す。
忘れてた、とは………。


「ごめん、ごはん食べたら大村に電話するわ」

相変わらず大村くんの扱いが軽い気がするなぁ、なんて。
私は苦笑いしながら「ははは、了解」と返事をした。

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