蛍火に揺れる
お母さんはしばらく考えた後、『考えたことないわ』とあっけらかんと答えた。


『もちろん、仕事を続けながら二人の介護をするのも考えたわよ。でもやっぱり『家で看取りたい!』って思いも強かったし…まぁ予想よりも早く死んじゃったのは計算外だったけど。二人をちゃんと見送れて後悔が無いから別にねぇ。特に思ったことなんて』

いや、何かそれは……欲しい答えとは違うんだけど、とは言えない。


『沙絵?』

「何?」

『あとね、人生の休暇は四ヶ月だけって考えたほうがいいわよ?』

「……はい?」

『いい?母親っていう仕事はすっごくキツい仕事なの。寝れない食べれない当たり前。休む暇もない。
 だからね、それを乗り越えるから母親って凄いのよ』

私は気の抜けた「…うん?」という返事しかできない。

『だから、今のうちにやり残したことを全部やっておきなさい?働いてないならチャンスだわよ。お母さんなんか、五十過ぎるまでなーんにもできなかったんだから。若いうちにしたかったことなんか山ほどあるだからね!』
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