蛍火に揺れる
正直あまりにも用意周到で抜かりがないので…やっぱりこの人はすごいなというのと、やっぱり私には勿体ない人なのではないか、なんてことを思っていた。


「ノリ君?」

「ん?何?」

「引き返すんだったら……今しかないよ」

親に挨拶なんてしてしまったら…もう彼は引き返せない所に来てしまうことになる。
こんな…彼の人生を決定付ける決断は、もう少し後でもいいのではないか。
私の方が後込みをしている状態で、ノリ君は何ともとぼけた質問を返す。

「ひょっとして…沙絵ちゃんのお父さんって『娘の男には一発殴らせろ?』系の人?」

「いや……違うと思うけど」

「じゃあ娘は嫁にやらんぞ系?」

「いや……」

むしろ…両手を広げて大歓迎だろう。

「じゃあ問題ないじゃん」

いつも通りのにこやかな笑顔でそう言うと、再び黙々と歩いていく。


「せめて受け身だけは思い出しておくよ」なんてとぼけたことも言いながら。
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