蛍火に揺れる
「どうぞ上がって」と促されて、私たちはリビングの方に向かう。
リビングではお父さんが、あぐらをかいて神妙な顔をして待っていた。


「さあさあ、どうぞ」
そうせかされて、私たちはお父さんの前に座った。
チラッとこちらをみたお父さんは、一瞬ピクっと眉を動かす。
すぐにその眉は戻るが……父よ、お前もか。
この人も絶対に予想よりもいい人が来たみたいな反応をしているのがわかる。

どんだけ娘のことを信用していないんだ、この両親は…… 。



私は改めて「ただいま」と声をかける。
そして「今お付き合いさせていただいてる、江浪憲正さんです」と言ってノリ君を紹介した。


「初めまして、沙絵さんとお付き合いさせていただいております、江浪と申します」

ノリ君は深々と頭を下げて、挨拶をしている。
それを見定めるような目で見ているお父さん。
そのまま黙ったまま私たちを見ているので、気まずいったらありゃしない。

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