雪に咲く華
私が連れてこられたのは生徒がほとんど立ち入らないと聞いた校舎の空き教室。
部屋の中は応接室みたいに机とソファーが置いてあって、そのひとつに座っていたのはまっさらな黒髪に澄んだ瞳、独特なオーラを纏った男の人だった。
「立ちっぱなしも何だからどうぞ座って」
ソファーをすすめられ、紅茶も用意してくれる。
あ、すごくいい香りだ。
一口飲んで小さくふーっと息を吐いた。
「じゃあまずは自己紹介から始めようか。
俺は3年の相原由希。双龍って族の副総長をしてる。それでこっちが、」
「総長の如月永和。3年だ」
「2年の水瀬葵です」
「じゃあ葵ちゃん、単刀直入に聞くけど、
君は一体何者?」
すっと細められる目。探るような視線。やましい事とかあるわけじゃないけど、やっぱり居た堪れないな。
何気に少し殺気も混ざってるような気もするし。これってちゃんと答えないと帰してもらえないとか?
「何者と言われましても、ただの高校生です」
「ただの高校生か…。なら個人プロフィールが出てこないのはなんで?」
調べたのか。そういえば双龍の副総長って凄腕のハッカーだったんだっけ。
だけどいくらこの人でも私のことを調べあげるのは無理。私とあの人ががっちりロック掛けたんだから。
「ある人が昔ロックを掛けたんです。パソコンが得意で、ちょっとした腕試しにって。多分それがまだ有効なのではないでしょうか」
「俺、ハッキングには結構自信あったんだけどなぁ。その人は腕のいいハッカーだったの?」
「それは…わかりません」