雪に咲く華
葵side
教室に戻ってみると真だけでなく、全員が揃っていた。しかも机の上に教科書を広げている。
「おかえり、葵」
「用事はもういいの?」
一番手前で勉強していた咲と信乃が声をかけてくれる。
「ただいま。遅くなってごめんなさい」
「大丈夫だよ。今、颯と真はお説教中だから」
「何かあったの?」
「もうすぐテストがあるでしょ?なのにまた勉強してないから永和と由希が怒っちゃって」
「特に真は毎度毎度由希くんが山を張ってようやく赤点回避するもんだから、いい加減まともに勉強させるんだって」
咲も信乃もくすくす笑ってはいるが、そんなのんびりした言い方で大丈夫なんだろうか。
「2人とも顔が真っ青なんだけど」
「永和くんたちスパルタだからねー。めちゃくちゃ怖いし!」
「でも2人とも明日からしばらく用事で忙しいって言ってたから、勉強どうするんだろう」
「颯たち夏休み返上だね!」
東雲の校風はちょっと変わっていて、普段授業に出ていなくてもテストさえ既定の点数とれば進級できる。けれどそのテストがすごく難しい。
成績上位者ですら8割超える人はほとんどいないそうだ。そして赤点をとってしまうと夏休みをほぼ丸々使った特別講習が組まれるらしい。
まあ1週間頑張って勉強すれば何とかなるだろう。
そう考えていた私は甘かったのだと知るのは翌日のことだ。