追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました2
 私がやわらかな頭頂を撫でながら告げれば、チビちゃんはお利口さんに一声鳴いて、再び皿に顔を寄せた。そうして今度は皿ごと食べてしまうような勢いではなく、ゆっくりと味わうように食べ始めた。プリンスやクロフのような巨大モフモフもいいけれど、腕の中にすっぽり収まるぬいぐるみサイズの黒ツヤモフモフは、また格別の可愛いらしさだ。
 尾っぽをフリフリさせながらシチューを頬張るチビちゃん、こと、ラファーダ王国第二王子ノアール様の背中を眺めながら、私はひとり頬を緩めた。
 けれど、先だって告白された、この姿でしか安心して食べることが出来なくなってしまったノアール様の苦しい心の内を思えば、緩んだ口も一瞬で真一文字に引き締まった。私がラファーダ王国に来るにあたって、ノアール様が獣化するなんていう前情報は聞かされていない。更に言うと、食が細く、ほとんど食事が喉を通らないと聞いていたノアール様が、まさか空腹を満たすため、日常的に人目を忍んで獣姿に変じ、盗み食いをして歩いているなど想像できるはずもなかった。
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