追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました２

　……戻りたかった。心の底から、人型に戻りたいと思った。
　抱き締められるより、俺がアイリーンを抱き締めたい。モフモフの前足なんかじゃなく、人型に戻ってちゃんとした腕でアイリーンを抱き締めて、その温もりと感触を肌で感じたかった。
「さぁ、いい子で待っていて。すぐに用意するわね」
　そっと腕を解くと、アイリーンは今度こそ店内へと戻っていった。
　アイリーンの背中を切ない思いで眺めながら、ふと、奴がまだ帰っていないことに気付く。
　……さすがに、時間差を目論むにしては遅すぎる。だとすれば、アイリーンと奴が一緒に昼飯を食いに行ったというのは、俺の気の回しすぎだったのかもしれん。
　なによりアイリーンは、しっかりと分別を弁えた淑女だ。そんなアイリーンが、他のオスと安易に「分けっこ」や「あーん」などするはずもない。
　――クシュンッ。