追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました2
「王妃という立場にありながら、母は身分の垣根に拘らない、大らかで優しい女性でした。料理が好きで、公務の合間を縫って、よく王妃専用の厨房に立っていました。特に甘い菓子作りが得意で、弟は母の菓子作りを一緒に手伝って楽しそうだった。けれど、そんな穏やかな時間は、母の死で断たれてしまった。突然の母の死に、弟はすっかり食が細くなり、その顔から表情もなくなったまま戻らない。この半年、父や私がどんなに手を尽くしても、弟の顔に笑みが戻ることはありませんでした。その弟が、あなたのクッキーを食べて、笑ったのです! あれだけ食の細い弟が、私が持ち帰ったクッキーを、すべて食べることができたのです!」
クロフに対して私は、クールで、物事に動じない冷静な人と、これまではそんな印象を抱いていた。だけど今、弟さんについて語るクロフからは、燃え上がるような熱が透けて見える。
……弟さんを思うクロフの心が、痛いくらいに伝わる。もし、私が助けになれるのなら――! 真摯な瞳を前にして、そう、思わずにはいられなかった。
クロフに対して私は、クールで、物事に動じない冷静な人と、これまではそんな印象を抱いていた。だけど今、弟さんについて語るクロフからは、燃え上がるような熱が透けて見える。
……弟さんを思うクロフの心が、痛いくらいに伝わる。もし、私が助けになれるのなら――! 真摯な瞳を前にして、そう、思わずにはいられなかった。