追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました2
 なにより、クロフの言うように、このストールがあれば風邪菌なんて寄ってくる隙もない。かくなる上は、腕によりをかけて美味しいお菓子を作りまくって、弟さんに食欲と元気を取り戻してもらわなくっちゃ!
「おーい! もう席に通されてるぞ。あんたらは注文、どうすんだー?」
 ルークが店内からひょっこりと顔を出して声を張る。
「あ、はーい! すぐ行きます」
 私は温かなストールをヒラリと揺らし、食堂に足を向けた。横目に、クロフが後ろを振り返り、フッと口角をあげて勝ち誇ったように笑ったように見えた。

 道程はとても順調で、私たちは当初予定した一週間よりも一日早い、六日目の夜にラファーダ宮殿に到着していた。
 宮殿の正門をくぐり、近衛兵が左右、等間隔に整列する回廊を進む。
 ラファーダ王国の宮殿は、レンガの赤と白壁のコントラストが印象的な、無駄のない堅固な造りをしていた。セント・ヴィンセント王国の優美な装飾が目を惹く建築様式とは異なり、質実剛健な印象だ。
「質素な宮殿で驚かれましたか?」
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