かすみ草揺らぐ頃 続く物語 ~柚実16歳~
「生々流転。勉強ができる黒沢にはこの単語、解るな? 移り変わっていくんだよ。何事も。雲も、季節も、時代も、ひとのこころも――違うか?」
 確かに、雲は二度と同じ様相を形成しないし、季節は巡る。時代というのも、私は祐太を失ってもう高校生にもなってしまったし、こころも祐太に固執しなくなった。
「逆にひとりのひとを、好きでい続けるのは難しいことだよ」
 先生の言葉が、胸の中に、風のようにすっと入ってきた。
「澤石のことも、いつまでも固執しなくていいんじゃないか? 好きだ、という思い込みじゃないのか? 逆に想う方が辛くないか?」
 私は半身を捻って、先生を見る。
 そこには“おとな”の男の人の顔がある。
「だから、俺は今日も黒沢を、車で送るよ」
「“だから”って……何それ」
 私も先生のように、軽い笑いをたてた。
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