かすみ草揺らぐ頃 続く物語 ~柚実16歳~
「うわぁい。海だ! 広い~! う~み~はひろい~なおおきい~な」
 私は車から降りると、砂浜を走りだした。
 白いミュールが、途中で脱げてしまったけど、それもそのままに波打ち際まで走る。
 脚を海につける。
「冷た~! 気持ちい~!」
 私は子どものようにはしゃいだ。
 何しろ、海に来たことはあるのだろうけれど、記憶がない。
 うちは父親がいないし、車を持っている親戚もいないし。
 母親とふたりで海なんて思い出もない。
 こんなに楽しく興奮する場所があるなんて、世の中もまだまだ捨てたもんじゃないなと思った。
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