かすみ草揺らぐ頃 続く物語 ~柚実16歳~
 先生は笑うと、私の肩に手をかけた。
 そして、自分の方に引き寄せて、歩き出す。
「……誰かに見られるよ」
「大丈夫だよ」
「どうだか」
 先生は、時間貸の個室休憩所を借りていてくれた。
 ドアには鍵がついていて、中は畳6畳間。
 先生は中に入るなり、座布団を並べて横になる。
「風呂に浸かるってのも、体力要るな」
「また親父発言――ほうじ茶、飲む?」
「ああ、もらうとするか」
 部屋の中にあったポットで急須に湯を注ぎ、湯呑茶碗にお茶を淹れた。
「若奥様だな」
< 282 / 400 >

この作品をシェア

pagetop