かすみ草揺らぐ頃 続く物語 ~柚実16歳~
「は? 私まだ結婚なんてする気ないし」
「そうだよなぁ。まだ16だもんな」
 私は先生の寝転ぶすぐ横の長机にお茶を置いた。
 長机を挟む形で、私は先生の正面に腰を下ろす。
「先生って結婚願望強いよね」
「そうかな。でももうそろそろ俺は落ち着きたいよ。家に帰れば好きな女がいてさ、いつか俺のクローンたちに囲まれて過ごしたい――幸せだろうな」
「結婚が幸せだとは限らないんじゃない?」
 私はずずず、とお茶を啜りながら応えた。
 事実、うちは母ひとり子ひとりの家庭だけど、そこそこ幸せにやっている。
「先生は結局、結婚がしたいだけなの? それとも元カノと別れて淋しいの?」
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