かすみ草揺らぐ頃 続く物語 ~柚実16歳~
 先生はそのまま立ち上がり、いらない、と私が言う暇もなく部屋を出て行ってしまった。
 ふう……。
 私はため息をついて、茶柱など立っていない湯呑をじっと見つめていた。
 すると間もなく先生は帰ってきた。
「ほら、乾かすぞ」
「え~、めんどい~」
「俺やってやるから」
 先生はコンセントにドライヤーを差し込み“おいで”と私を招いた。
 仕方なく先生の許へ行き、背を向けて髪を彼に預けた。
 ぶおー、と勢いの強いドライヤーだ。
 これならすぐ乾きそう。
 こういうことされても、まったくドキドキしない。
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