かすみ草揺らぐ頃 続く物語 ~柚実16歳~
 はっ、と、純は目を開く。
「バンドをやりたい人は、世の中に五万といるわ。そうでしょう。そこでつながりを持てばいい。圭吾先輩がバンドを辞めるなら、深追いはしない。瞬が東京で音楽活動を続けたいというなら、離したくないなら、同じ大学を追っかけるばかりよ」
 純は、姿勢を正し、真っ直ぐに見つめ始めた――未来を。
「そっか。そうだよな」
 顔の血色がよくなった。彼は、前を見据えている。
 それは、運動部の練習の活気ではなく、自分自身の未来を。
「……ありがとう」
 純はそう言った。
「だけど、オマエの言う科白って、いちいちカッコつけてるよな」 
 ――彼の皮肉も相変わらずだ。
 そんなことに安堵を覚える。
 私は、やっぱり、そんな純が好きだ。
 口に出すほどのことではない。
 ほんのりと、こころに蝋燭の火が灯るような、心地よい感情。
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