かすみ草揺らぐ頃 続く物語 ~柚実16歳~
 そう言うと、彼はずっと掴んでいた私の手をするりと逃し、そのままずんずんと先へ行ってしまった。
 ひとりで。ただ、ひとりで。
 何の言い訳もできない私は、その場に立ちつくことしかできなかった。
 そういえば、瞬も圭吾先輩もいないところで、行く末を嘆いていた純のことを思い出した。
 私、そんな彼の一大事の時に、何もしてあげていられていない。
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