うるせえ、玉の輿。
『お金はいらない。けど、俺がしてみたいけどできなかったことを、してもいい?』
王子さまは、いそいそと勉強机の鍵がついている引き出しから宝石を取り出した。
宝石と思ったのは、色鮮やかなアイシャドウだった。
紫とか水色、ピンクとかがキラキラ太陽の光で輝いてる。
リップもたくさんあった。香り付きのほんのり色がつくのから、真っ赤なシャネル、アナスイとか。
よく見れば、花柄のカーテンだってある。
『これで君を可愛くしてみていい?』
『ええーっなんで、こんなお姫様みたいなの、にあわない』
『今から似合うようにしてあげる。ああ、でもうちの親に内緒でね。すっごく怒るから。男の俺がこんなの持ってるの知ったらまた奪われる』
王子さまは、大事に宝石のように化粧品を撫でると、寂しく笑った。
『君を可愛くしてあげる。で、玉の輿にのれば、あんなお化け屋敷からおさらばでしょ』
『玉の輿?』
どんな意味だろう。
初めて聞いた言葉に首をかしげると、王子さまは口紅を持った。
ピンク色の、お姫様みたいな可愛い色。
『お金持ちと結婚するってことだよ』
その言葉に、固まった。
そうか。子どもの私が生きていくには、金持ちに媚びを売る方が早いんだと。