ねえ、理解不能【完】
昼休み、廊下で千草とすれ違ったけれど、姿を確認してからは絶対に千草の方を見ないようにした。
千草がいなくても全然大丈夫だって見せつけるみたいに、教室にいる川瀬くんの名前を呼んでみたりなんかして、自分でも何がしたいの分からなかったけれど、もう何でもいい。
放課後になって、川瀬くんが私の席に来る。
川瀬くんはいつからかみんなが帰って教室に二人きりになるのを待たなくなった。
帰ろうって違う人に誘われても「白崎と帰るからごめん」と断るようになって、周りから好奇の視線を感じることも少しだけある。
あくまで、“作戦実行中”だったから気にしないようにしていたけれど。
「あのね、千草ともう仲直りしないことにしたの。たくさん相談に乗ってくれたのに、本当にごめんね....!」
帰ろう、と川瀬くんが言う前に、勢いよく口にした謝罪に、彼は、え?と目を丸くして、少し戸惑った表情を浮かべる。
「だから、作戦はもういいの。今まで本当にありがとう、ごめんね。もう、送ってもらわなくて大丈夫だよ、千草との関係修復するのもうやめる、無理だってわかったから」
本当に自分勝手だよね。性格悪いってこういうところなのかな。朝の千草を思い出しかけて、急いでその思考回路をストップさせる。
それから、川瀬くんに向き直って、ごめんねの気持ちを込めて頭を下げた。