ねえ、理解不能【完】
「昨日のドラマ、みた?9時からの不良系のやつ」
「みたよ!昨日の回は感動だったよね、泣いちゃったもん」
「はは、たしかに白崎涙もろそう」
「とかいって川瀬くんも泣いてそう!」
「俺?うん、実は、ちょっと泣きそうにはなった」
川瀬くんが泣きそうになっているところを想像したら、ふふ、と笑ってしまって、冗談ぽく少しだけ睨まれた。
川瀬くん、色んな顔をするんだね。
本当に最初は爽やかなだけかと思っていた。
爽やかじゃない部分も素敵だなって思うよ。
渡ろうと思った横断歩道の信号機がちょうど赤色になって、わたしと川瀬くんは立ち止まる。
そこで会話が止まってしまった。
川瀬くんも黙っているから、私も話さない。
通りすぎる車をぼんやり眺める。
その隙間で、浮かぶのは、やつの顔。
染まらない夕焼けみたいに、切れてしまったつながりを仕方ないことだって諦められるだろうか。
信号を渡って少し歩けばすぐに、私の家だ。
その前に千草の家の前を通ることになる。
でも、知らない人の家だって思うことにする。
広野みゆちゃんと家の前でイチャイチャしていてもいいし、してなくてもいい。
どっちでもいい、そういう嘘は積極的についていくべき。