ねえ、理解不能【完】




だけど、妥協して一緒に帰ろうとはどうしても思えなくて。昨日の今日で、二人で帰るなんて、到底できない。


心の整理も、覚悟もなにひとつない状態で、ゆうの前に立っていることが難しい。




明日からは、頑張るから。




「....ごめん、今日は一人で帰りたいの。一人になりたい。......ごめんなさい」



深々と頭を下げる。こうでもしないとダメだって思ってる。こうすればゆうは頷いてくれる、って分かってる。


しばらく、しん、と私たちの間に沈黙がうまれて、苦しさが広がる。

俯いたままでいると、頭の上に手のひらの感触がして、それから、ゆうがゆっくりと私の前にしゃがみこんだ。


「青、顔上げて」


さっきよりも近い距離で届いたゆうの声。
私は恐る恐る顔をあげる。そうしたら、優しい表情のゆうがいて。



「分かったよ。今日は別々に帰ろっか」

「ごめんなさい」



口から滑るようにでた謝罪の言葉に、ゆうは、首を横に振った。

だけど、もう一度、口から滑り出す。



ごめんなさい。



一緒に帰れなくて。

うまく笑えなくて。






_____千草のことが、好きで。





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