ねえ、理解不能【完】
「そんなに謝らないで。青って変なところ律儀で可笑しい」
ゆうが、くすり、と笑ったけれど、瞳の温度はつめたくて、爽やかさはあまりなかった。
ゆうの手が私の頭に伸びてきて、前髪に触れる。優しい手つき、だけど、ドキドキはもうしない。頰に集まるはずの熱は、逆に頭を冷やしていく。
そうして、触れられたままじっとしていたら、ゆうの動きがとまって、自嘲めいた笑い声が耳に届いた。
「ー昨日見た映画、そんなに引きずってる?」
「え、」
「ううん、なんでもない、」
「.........」
「一緒に帰れないのは、全然いいよ」
「でも、」
私の前髪から指を離したゆうが、机に手をついて立ち上がる。
それから、ゆるい力でポニーテールの毛先を引っ張った。
「........っ、」
呼吸が、とまる。
顔を近づけて、ゆうは私の耳元にそっと唇を寄せた。
「ーー俺、別れないから」