ねえ、理解不能【完】
クリアで真っ直ぐな声が、こころの奥の芯の部分にストン、と落ちてくる。
鼓膜が震えた。
なにもかも見透かしているかのようなその声に、息の仕方を一瞬忘れてしまう。
別れないから。
その宣言に、わたしの選択の余地は含まれてなくて。
私は、こくり、と慎重に頷く。
なにに対しての慎重さなのか分からないけれど、頷くしかなかったの。
ゆうが、私の髪から手を離し、顔を遠ざける。
引っ張られていた感覚がゆるみ、少しだけ肩の力がぬけた。
「じゃあね、青。また明日」
ゆうが可憐に微笑む。優しさと残酷さをいっぺんに纏ったような雰囲気に、わたしは返事を返すことができなかった。
ふわり、ゆうは、柔軟剤の香りを残して帰っていった。