ねえ、理解不能【完】
「青、明日の土曜さ、家に親いないんだけどよかったら俺の家くる?ゆっくりできるかなあって」
曇り空の下、私の手をしっかり繋ぎながら、ゆうが突然そんなことを言い出した。
首元に伝う汗が不愉快で、手の中で生まれる汗も今ではただ気持ち悪いだけで。
「んー明日?」
「うん、なんか用事ある?」
「別にないよ」
用事は何もないけれど。
不安な部分と気がひける部分がある。
ゆうの彼女としてちゃんといれるか分からないし、休日にゆうとゆっくりしたいなんて思わないなんて最低な本音。
だけど、ゆうが納得してくれるような断る理由が瞬時には思い浮かばなかった。
「じゃあ、いい?」
「……うん、ゆうの家いく」
ゆうの顔をチラリと見上げて、にっこりと笑うと、ゆうは目を細めて、楽しみ、って呟いた。
憂鬱だけど、ゆうと遊んでる間に少しでも千草のことが頭から消えるなら、それはそれでいいのかも。
消したくない気持ちが、不適切なことくらい知っている。
自分がどんなにこの気持ちを大切にしたくても、普通に考えてはやく消さないといけないってことくらいちゃんとわかってるつもりだ。
その時の私は、そんな不純な気持ちを抱えて満足してしまっていたんだ。