ねえ、理解不能【完】
それに、千草の部屋では、たいていベッドに座っていたから。
「.......あ」
千草。
今日は、今までちゃんと忘れられていたのに、思いがけないところで思い出してしまって、不意に声が漏れる。
ゆうが私に視線を向けたから、首を横に振って頑張って笑った。
嫌悪感、罪悪感、恋情。不意打ちのトリプルパンチに、本当なら太刀打ちできないはずなのに、私ってばよくやってる。
生活の些細なところに、気づいたら千草との思い出を蘇らせるスイッチがあって、これからも自分では気づかないうちにそのスイッチを押してしまって、その度に千草のこと考える羽目になるのかな。
「......青、」
そんなことをぐるぐると考えていたら、ゆうが突然私の名前を呼んだから、吃驚して身体がはねた。
ベッドが小さく、軋む。
ゆうはじっと私に瞳をよせて、微笑んだ。
.......爽やかさが、すごく怖い。