ねえ、理解不能【完】
ゆうが椅子から立ち上がって、部屋の扉に向かう。
「飲み物もってくるけど、なに飲む?」
「あ、えーと、じゃあお茶もらってもいい?」
「うん、分かった。ついでにゲーム機ももってくる」
ゆうが部屋を出ていって、パタン、と扉が閉まる。
束の間の一人きりの空間で、私は頑張ってあげていた頰の力をゆるめて、目を瞑る。
最近のゆうの爽やかな笑顔に、本当は結構怯えている。
ゆうがなにを思って、なにを考えているのか、前なら真っ直ぐに好意だけを受け取っていたけれど、今は不透明で。全然、分からない時がある。
でも、きっと、気づいてるだろう。
それでもゆうは、私が口に出すまでは、絶対に気づいているということを誤魔化し続けるんだと思う。
『俺、別れないから』
私は、そんなことを口にする勇気なんてない。