ねえ、理解不能【完】
「俺さ、もう青に恋を教えるとかそういうの全部投げ出して、ただ好きって気持ちだけで今一緒にいるんだけど」
ぎゅっと近かった距離がさらに近づいて、腕がしっかりと触れあう。モスグリーンの毛布は大きく皺をつくっていて、その間で熱が生まれる。
「青、ちゃんと分かってくれてる?」
頷くしかない質問をするのは、ずるい。だけど、その質問をさせているのは。ゆうを不安にさせているのは。紛れもなく私で。
私は近すぎる距離に、動揺しながら、小さく頷く。離れてほしい、けれどその上手な伝え方を知らないし、これ以上傷つけたくないなんてエゴ。
ゆうの柔軟剤の香りが鼻腔をくすぐる。
もう、私はこの匂いしか思い出せない。
覚えておきたかった匂いは、手繰り寄せられないし、忘れてしまった。