ねえ、理解不能【完】
「分かっててくれるだけで、前はよかったんだけど、」
「う、ん」
「今はさ、もう、それだけじゃ足りない」
じっと、合わさり続ける瞳。
熱と艶、どちらも同じ分だけ含んだ濡れたゆうの瞳に、ザラリ、と心臓を何かがなでる。
それから、ふいに、沈黙が私たちを包んだ。
ドクン、心臓が鳴る。その音が嫌になるくらい自分の中で響いた。
「..........、」
「.........っ、」
この沈黙がマズイ、ってことくらいは経験がない私でもわかる。
予想が当たっていないことを祈って、ゆうの瞳から逃げ出すかのように目をそらせば、そらした瞬間に「青、」と名前を呼ばれる。
鼓膜が震えて、ゆうをもう一度見つめる。
そうしたら、ゆうは私の顔をのぞきこむようにしてぐっと顔を近づけてきた。
ベッドが、怪しい音を立てる。
瞬きすら許されていないような気がして、ゆうの瞳からもう逃げられない。
こんな雰囲気は生まれて初めてだった。