ねえ、理解不能【完】
______私の、ファーストキス。
初めては好きな人と。なんて、そんな夢見事を切願していたわけじゃなかったけれど、触れてから、気づいた。
私の唇に初めて触れるのは、好きな人がよかった、心の中でちょっとはそう思っていたことに。
ゆうの気持ちが唇から溢れてくるようで、私は受け止めきれない。
重なった唇が、ゆっくり離れていく。
ゆうは、一度私から目をそらして俯いた。透き通るような睫毛を見つめる。
どっ、どっ、心臓の音はどちらのものか分からないけれど、温度を確かめればきっとはっきりするだろう。
「......青、もう一回していい?」
ゆうの、いつもより熱っぽくて扇情的な声。誘惑、というより、支配だ、と思った。
私は操られるように頷いてしまう。
そうしたら、ゆうの手が、私の後頭部にまわった。
「……っ、……」
今度はさっきよりも、深く唇を押し付けられて。思わず目をつむってしまった。
深い口づけは、角度を変えて、啄ばむようなものに変わる。
食べられている、みたいなキスだ。
後頭部で回るゆうの手のひらの体温が熱くて、しっかりと固定されてしまい、私はもう応えるしかない。
いつもの爽やかさなんて何一つない男の顔をしたゆうだ。