ねえ、理解不能【完】
「っ、っはぁ、.......」
ゆうが、突然私の唇を解放する。
私はその隙に、大きく酸素を吸い込んだ。
そして、恐る恐る瞼を開けると、ゆうの冷ややかな表情がそこにはあって。
熱くて苦しいキスとは対極にあるその冷ややかさに、私は呼吸を整えながらも戸惑い怯える。
唇が、濡れている。細くて長いゆうの睫毛がかすかに動いて、伏し目がちに私を見た。
後頭部にまわっていたゆうの手はいつのまにか私の肩にかけられていて。
くちゃくちゃになった毛布が、ベッドから落ちかけている。
静まりかえったゆうの部屋で、ゆうはぐっと私の肩に体重をかけて、口を開いた。
「ねえ、青、今くらい、俺のことだけ考えてよ」
あ、と思った時には世界が変わっていて。
ゆうの身体の後ろには天井。頭に柔らかい毛布の感触がして、押し倒されているんだ、とどこか客観的に思った。
だけど、その刹那、扇情的に細められた目に、恐怖心が膨れあがる。
両手を私の耳のすぐそばについたゆうが、爽やかさなんて何一つない冷ややかで、だけど熱っぽい表情で私を見下ろす。