ねえ、理解不能【完】
無我夢中で走る。
見知らぬ住宅街の中を、乱れたシャツを直しながら。
朝のぼやけた記憶を辿りながら、家までの道を急ぐ。
恐怖からうまく走ることもできないし、呼吸もままならない中で、心臓の音だけがうるさい。
ゆうが、追いかけてきたらどうしよう。
ゆうの手がもう一度私に触れたら、もう壊れてしまう。想像しただけで、震えはひどくなって。
怯えながらそっと後ろをうかがったけれど、ゆうの姿はどこにもなかった。
だけど、安心なんてひとつもできないの。
怖い。すごく、怖かったし、今も怖い。
理性なんてないし、思考回路も恐怖で遮断してしまっていて。
...... だれか、今すぐ、安心させて。
「っ、千草ぁ、」
お願い、今すぐ、助けてほしい。
怖かったの。
私のこと、馬鹿だなあって叱ればいいから、拒まないで。