ねえ、理解不能【完】
「……っはぁ、……」
気がついたら、千草の家の前にいた。
絶対に、涙と鼻水で顔はひどいことになっている。スニーカーのかかとも完全につぶれているし、ショートパンツのすそはめくれている。
だけど、なんでもいい。
止まらない震えと涙。すがりたいと思った相手。それ以外のことを考える余裕なんてひとつもなかった。
躊躇いもせず、チャイムを押す。
押してから、家に千草がいなかったらどうしよう、なんて不安が巡って。それで、また絶望感が私を襲って、涙が目の奥から溢れてくる。
玄関の前に、震えて頼りない足で立つ。
そうしたら、しばらくして、階段を降りる音と、「はい、」って千草の低い声が聞こえて、扉がゆっくりと半分開いた。
「……っ」
その開いた隙間から、私は千草の許可もなく、千草に抱きついた。突然だったからから、千草の身体が硬直したのを肌で感じる。だけど、私は離せなかった。
中途半端になっていた玄関の扉が、数秒の後、背中にぶつかる。
扉に挟まれる体勢でいたら、いつのまにか扉は私の背中から離れて完全に開いた。千草の手が、押したんだ。
汗だらけだと思う。
それに涙と鼻水も千草のシャツにくっついてると思う。
だけど。