ねえ、理解不能【完】
重くて苦しい空気だけが流れ続ける。
それを変えたのは、広野みゆちゃんの鼻をすする音だった。
私の背中の向こうで、気配がする。
それから、もう一度、ぐすん、と鼻をすすったかと思ったら、
「ちぃくんの彼女は私だから」
その言葉と甘い匂いだけを残して、広野みゆちゃんが玄関からでていった。
パタン、と扉が閉まる音に続いた足音が遠ざかって、聞こえなくなる。
しばらく、私も千草もなんにも言わなかった。
「.....あーあ」
千草が自虐的に笑う。
それから、私の肩に顎をのせて、全部お前のせいなんだけど、と不機嫌に言葉を落とした。
あーあ、なんて。性格が悪すぎる三文字に、失望したいのに。今の私は、そんな千草でさえ好きだって思ってしまうんだ。