ねえ、理解不能【完】
最後にはいった時から何も変わっていない千草の部屋。
もう一生入らないって決めたはずの部屋。
こんな形で再び入ることになるなんて思わなかった。
前とひとつだけ違うことは、部屋に甘いバニラの匂いが広がっていることで。
残り香に、ちくりと胸が疼いてしまう。そんな資格なんてまるでないくせに。
広野みゆちゃんがいた証。千草の彼女は広野みゆちゃん。さっきの、宣戦布告のような広野みゆちゃんの声が頭の中でよみがえる。
私は、ベッドには座らずに絨毯の上に座った。
千草は、私の隣に少しだけ隙間をあけて胡座をかく。触れない距離。ふー、と息を吐いた千草を見上げると、まだ怒りを含んだ瞳につかまる。
ふいに、千草がベッドの上からグレーのパーカーをとって私の足にかけた。ショートパンツから伸びた素肌が隠されて、私は首をかしげる。
「寒そう」
「べ、別にそうでもない」
「でもかけといて」
だるそうな千草の声に懐かしさを感じつつ、こくりと頷いたら、千草は私から目をそらしてもう一度息を吐いた。