ねえ、理解不能【完】






最後にはいった時から何も変わっていない千草の部屋。

もう一生入らないって決めたはずの部屋。



こんな形で再び入ることになるなんて思わなかった。




前とひとつだけ違うことは、部屋に甘いバニラの匂いが広がっていることで。

残り香に、ちくりと胸が疼いてしまう。そんな資格なんてまるでないくせに。



広野みゆちゃんがいた証。千草の彼女は広野みゆちゃん。さっきの、宣戦布告のような広野みゆちゃんの声が頭の中でよみがえる。




私は、ベッドには座らずに絨毯の上に座った。


千草は、私の隣に少しだけ隙間をあけて胡座をかく。触れない距離。ふー、と息を吐いた千草を見上げると、まだ怒りを含んだ瞳につかまる。



ふいに、千草がベッドの上からグレーのパーカーをとって私の足にかけた。ショートパンツから伸びた素肌が隠されて、私は首をかしげる。




「寒そう」

「べ、別にそうでもない」

「でもかけといて」




だるそうな千草の声に懐かしさを感じつつ、こくりと頷いたら、千草は私から目をそらしてもう一度息を吐いた。




< 300 / 450 >

この作品をシェア

pagetop