ねえ、理解不能【完】
また溢れてきてしまった涙に、嫌になる。どれだけ泣けば気がすむのか自分でもわからない。
だけど、千草がいるから泣いてしまう。
泣かれるのはうざいって千草も思ってるかもしれないのに止められなくて。
私は必死に唇をかんで、千草のパーカーを握りしめる。そうしないと嗚咽までもれそうで、情けないよ。
「お前ね、男を甘くみすぎ」
千草の呆れながらも優しい声と、私をなでる丁寧な手つき。
そんな千草の声を聞くのは久しぶりで、余計に苦しい。
まだ仲良しな幼なじみだったときにも、そうだったの。私が泣きたい時や泣いている時に千草はすごく優しかった。
私を慰めるのがきっと世界で一番うまいの。
だけど、今はもう私のことなんて嫌いなんだよね。
ーーなんで、嫌いなのに甘やかすの千草。
こんな状況をつくりあげたのは私で、千草はただ放っておけなかった被害者で。
だけど私を甘やかす千草をなぜか今、すごく許せないって思ってしまった。甘やかしてほしいのに、甘やかさないでほしいなんて、わがままの度が過ぎているけれど。
だって、甘やかしてくれる千草はもう私のものじゃないんだった、ってそれを認めることはしたくなくて。
千草が私のものだったことなんて今まで一度もないのに、なんて烏滸がましいんだろう。
絶対に拒絶してほしくなかった。でも、かといって今だけの優しさで必要以上に受け入れて欲しくもなかったよ。
誰にも言えないし、言わない。
醜くて、ちぐはぐな感情。
別に思うことくらい、許してほしい。